ツ、イ、ラ、ク

ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

初姫野カオルコ。
大体500〜600ページ近くあって、300〜400ページに慣れていた最近だったから久しぶりに読みごたえみたいなものを感じた。
いやそんなことよりもこの本は、なんかもーとにかく色々な面から色々な意味から刺激的だった。
舞台は田舎街に住む中学校。主人公の隼子を取り巻くクラスメイトと教師達の恋愛群像劇、といっていいのだろうか。
とにかく愛情、友情、嫉妬、憎悪、侮蔑、清純、潔癖、好奇、葛藤…。色んな感情が渦巻いている様は本当に自分もその教室に存在しているような気にまでさせられた。
とりあえず表紙とタイトルから想像していた話とは全然違っていて、こんなに生々しい話だとはまさか思わなかったんだ。
読んでいる時は「若さ故の、幼さ故の」という意味が理解できなくてむしろ逆なのではと思っていたけれど読み終えて頭の中でもう一度なぞらえてみたら、成る程これはとんでもないくらいにリアルな「若さ故の、幼さ故の」青春だと思い知らされた。
生きていくうえでの汚さとか愚かさがなんのフォローもなく書かれているんだけどそれが凄くうまい作家さんだなぁと思った。
凄く印象的なのが、統子が太田くんを文字通り寝とる部分。恋愛至上主義の女ってなんて恐いんだとゾッとした。私には全く存在しない感覚が恐ろしいながらに面白かった。